脱サラして新規就農!  
  (2007年6月、園主 記)  
   
 


3年前の今頃はまだサラリーマンをしていました。
妻もまさか農業をやることになるとは想像もしていなかったでしょう。
本人も想像していませんでしたから。

いつだったかは覚えてませんが、近所の図書館(当時は会社のある滋賀県に住んでいました)で「脱サラで新規就農」という本を目にしました。へ〜、農業に転身なんて出来るんだ、と少々感心しましたが、現実には考えられませんでした。本にはいいことばかりしか書いていないので、そのときは「ほんまかいな」という思いが強かったのを覚えています。しかしその数年後には本格的にブドウ作りに取り組んでいるのでした。

会社に就職して6年、職場の人達にも恵まれ、様々な人に刺激をうけ、貴重な時間をすごさせてもらいました。入社して3、4年はただガムシャラに働いていた様に思います。そして6年目ころになると、ふと「自分のやりたい仕事はこれなんだろうか?」と頭をよぎるようになりました。「長い仕事人生、一番好きなことを仕事にしたい」、そういう思いが強くなってきました。

そして7年目の春、退職し農業をめざす、と上司につげることになりました。

(妻に話したのはその何週間かあとでした・・・)

   
   
桃!?→葡萄!

農業をするにしてもまず何を作るかを決めなければなりません。
しかしそこに迷いはありませんでした。桃!
理由は大好きだから。
さて桃を作るにはどこがいいかなと考えましたが、そこも即決。岡山!
なぜかは分かりませんが桃といえば岡山という意識が自分の中にはあったのです。

そして岡山県について調べてみるとなにやら「新規就農研修事業」というものを実施しているようです。内容はまず体験研修(ベテラン農家さんのもと1ヶ月間農業を体験する)をしたあと2年間の実務研修をするというもので、実務研修中の2年間は研修費として月額15万円が支給されるというものです。
なんて素晴らしい制度なんだ!ということで早速体験研修を申し込むことになりました。

さて、体験研修を申し込むに当たり、場所を決めなければなりません。この事業のシステム上、体験研修を受けた場所で引き続き実務研修をし、そしてその地で就農ということなので、 この場所選びは結構重要です。ということで体験研修申込み締め切りの7月までは岡山県視察です。

まずは岡山県農業会議の方に紹介していただき、桃農家さんを視察させてもらえることになりました。 妻と二人でドライブがてら、僕は意気揚々、妻はどうなんだろう? の状態で出かけていきました。 目的の桃農家さんとの約束までにちょっと時間があったので、職員さんの案内の元、近くの桃園をみせてもらいました。が、ちょっとここの桃園は活気がないというかなんというか、あまりパッとしないようなところで、ちょっとイメージが違うなーと思いながら車にもどり次に向かおうとしていたところ、助手席で妻は泣いているではありませんか。

農業をするということに一応OKはしてくれたものの、やはりちょっと無理をしていたんでしょう。 これには参りました。もう上司に会社を辞めると言ってしまったけど、「うそでした」と言おうかと本気で考えました。 そんな状態のまま職員さんの案内は続き、たまたま近くにブドウ園があったのでそこを見せてもらいました。

そこのブドウ園をみたとき、妻の表情が変わりました。
そのブドウ園は本当に見事で、たわわに実ったブドウが整然と並んでいる様は感動的なものでした。
そして奇跡的に妻の中でブドウを作りたいという思いが生まれたようでした。 これは本当によかった。もう桃が好きとか言っている場合ではありません。ブドウです。ブドウしかありません。 ということでこの瞬間、正戸果樹園の作目が決定したのです。

勝央町
その後はブドウの産地を見てまわる日々が続きました。が、なかなかいいところがありません。 県南は便利はいいのですが、都会過ぎる感があり、自分のイメージとはちょっと違います。 県北は自然豊かでブドウを作るにはよさそうですが、 店などが少なく生活にはちょっと不便そうです。 と、なかなか決まらないまま、その日も収穫なく滋賀に帰ろうとしていた時、帰りに湯郷温泉にでも寄ろうかと美作ICを降りました。美作ICから勝央町は近かったので、ほとんどノーマークだった勝央町をついでに見てまわりました。するとイメージにぴったりではありませんか。ゆったりとした田園地帯とブドウ畑がひろがり、適度に店などもあります。温泉好きの妻の意向もあり、無事、候補地はここ勝央町に決定しました。
体験研修、実務研修、そして就農

さて勝央町の面接を経て、9月1日から1ヶ月間の体験研修がはじまりました。 一般的には会社を辞めずに1ヶ月体験研修をしてみて、出来そうだと判断したら、翌年4月からはじまる実務研修に進むというのが通常のケースかと思われますが、私の場合は会社をすでに辞め、体験研修が始まると同時に勝央町へ引っ越してきました。役場の方が町営住宅を案内してくれましたが、まさか家財道具一式もってくるとはと、少々困惑気味でした。

体験研修ではブドウ部会の部会長さん宅や、若者会の会長さん宅でお世話になり、ブドウ作りについていろいろなことを教えてもらいました。やはり身近に手本になる農業者さんがいるというのはとても心強く、また目標もはっきりし、ブドウ作りをするんだという気持ちが一層強くなりました。これが体験研修期間中の一番に収穫でしょう。

さて、やる気が増したのはいいんですが、肝心のブドウを作る土地がまだありません。 私がすでに引っ越してきていることもあり、部会長さんはいろいろなところに打診をしてくださいました。 そして9月の終わりころ、なんとかブドウを新植する畑を借りることができました。 新規就農をするとき、土地を確保するのが大変だといわれていましたが、 私の場合は部会長さんの力により、比較的スムーズに畑をかりることができました。 部会長さんや、その土地の地主さんには本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

その後、新植する土地以外に、すでにブドウの木がある成園(20a)も借り受けることができ、翌年の4月から実務研修がスタートしました。研修といっても実際は経営をスタートさせているようなものです。 なにもかも分からないことだらけで、失敗ばかりでしたが、いろいろな人にたくさんのことを教わり、なんとか1年をすごすことができました。翌、研修2年目はさらに15aの加温ハウスを借り受け、またまたわからないことだらけでしたが、まわりに先生がたくさんいるという恵まれた環境で、大きな損失を出すことなく終えることができました。

そして今年、ブドウ作り3年目、実務研修も修了し、(そして研修費の支給も修了し、) 本格的に独立したブドウ農家としてスタートしました。

現在管理している畑は成園35a、新植園45a、計80a(2400坪)。
作業に追われる日々ですが、自然の厳しさの中で農業の奥深さ、可能性を感じつつ
すこしでも良いブドウを作れるように、頑張っていこうと思います。

2007.6 正戸 崇

正戸果樹園
〒709-4303 岡山県勝田郡勝央町豊久田1641  TEL&FAX:0868-38-3099  e-mail はこちら
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